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こぼれ話し
( ターボオプティマ 入手秘話 )





 
    − 世界最強。 −
 
 かつて、そう呼ばれた、一台の車があった・・・。
 
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 それは、ある暖かい、昼下がりの事だった。
 私がいつもの様に、自転車で買物をしていると、
 一軒の鄙びた古い家が、私の視界に飛び込んで来た。
 
 その家は、以前、模型店を営んでいたらしく、
 固く閉ざされた、サッシの戸口の上には、
 かすかにペンキで描かれた文字が、かろうじて認識出来る、
 サビだらけの看板が掲げてある。
 ・田・・・模・店・・・ 全て読めない。
 
 家の隅に建てられた、小さなプレハブの店舗には、
 自動車が跳ね飛ばしたものだろうか、
 乾いた泥が、辺り一面に、こびり付き、
 戸口の内側には、紫外線で色落ちし、
 ところどころ、自重で破れたと思われるカーテンが、
 大きなシワを造って、ダラリと、だらしなく垂れ下がっている。
 
 普通の人であれば、見向きもしない様なその店に、
 私は何か、不思議な魅力に取り付かれ、
 まるで吸い込まれるかの如く、その家に近づくと、
 辺りをキョロキョロと、一通り見回した後、
 サッシのガラスに額を当てて、
 破れたカーテンの隙間から、中を恐る恐る、覗いてみた。
 
 店舗の中は薄暗く、商品の大半は処分され、床にはゴミが散乱し、
 かつては、色とりどりの商品が並べられていたであろう、その陳列棚には、
 びっしりと、ホコリが被っている。
 
 その陳列棚の一番隅に、閉店セールの際に売れ残ったものであろうか、
 これまた、ホコリまみれの大きな箱が、5〜6個、不揃いに鎮座している。
 私は、その箱を見たとき、”ハッ” としてしまった。
 カーテンが邪魔になって、良く見えないのだが、
 似ている・・・ 確かに、似ている・・・。 
 いや、まさか・・・・・。
 
 実は、その日、私はたまたま、いつも使う道を外れて通っていたのだが、
 こんな所に、こんな店があることは、今まで、一度も気付かなかった。
 というのも、そこは、通りから少し外れた住宅街で、
 地元の住民しか通らない、閑静な場所だからである。
 
 また、その店の、ちょうど道を挟んだ真向かいが、
 建築資材メーカーの事務所になっており、
 近代的な、モダンな、3階建てのビルが建っている。
 工場設備は無いので、周囲は至って静かなのだが、
 それでも、朝晩には、小奇麗にスーツを着込んだ、若い男性社員やOLを見かけるし、
 10時過ぎ辺りになると、そのメーカーの重役や、県職員の関係者、
 (車に官庁名が書いてある。公共事業絡みだろうか?)
 はたまた、お抱えの顧問弁護士らしき人物が、高級国産車で玄関に乗り付けるや否や、
 数名の幹部社員が、直ぐさま表に出迎え、
 深々と頭を下げる光景を、よく目にする。
 
 いわば、この一本の道を挟んだ、究極とも言える社会的対比が、
 益々、この店を、みすぼらしく見せているのだ。
 
 これから洒落たフランス料理店にでも行くのだろうか、
 楽しそうに談笑しながら退社する、若い男女数名のグーループは、
 この閉店した模型店を覗き込む、不審な男の行動を目撃し、
 さぞや私の事を、怪しい者と、訝(いぶか)しがったことだろう。(笑)
 それでも、私は、あの箱の事が、気になって気になって、仕方がなかったのである。
 
 私は、遂に、意を決し、その店の主(あるじ)を、訪ねて見ることにした。
 居住用に使用される建物の玄関には、壊れた自転車や廃材が道を塞ぎ、中に入る事が出来ない。
 それで、私は、裏口にまわり、勝手口のチャイムを、震える指で押してみた。
  『 御免ください・・。御免ください・・・。』
 返事が無い。私は諦め、勝手口に背を向けて、正に家を立ち去ろうとしたその瞬間、
 後ろから、私を呼び止める、大きな声が聞こえて来た。
  『 誰?! なんねー!? 何の用ねー!! 』
 
 見ると、初老と思しき男性が、勝手口からヒョコリと顔を覗かせて、
 私を不思議そうに見ているではないか。
 私は、直ぐに立ち戻り、その男性に事の始終を説明した。
 聞くところによると、その模型店は、その男性の息子が営んでいたそうなのであるが、
 不況の煽りを受け、遭えなく店をたたんだそうなのである。
 今の子供は、苦労して何かを造るより、直ぐに、ゲームにお金を使うと、嘆いておられた。
 そして、話しの顛末を、終えるや否や、私にこう、言ったのである。
  『 お兄ちゃん、アンタ、そんなにラジコンが好きなんね?
    そんなに好きなら、あそこにあるラジコン、好きな分だけ、持って帰りんさいや。』
 
 私は、その申し出を、快く承諾し、
 壊さないように、大事に大事に、自転車の荷台に積んで、持ち帰った。
 そう、その箱には、紛れも無く、こうハッキリと、書かれていたのである。
 
      ターボオプティマ。
 
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 確かに、京商は早い、早いけど、デザインがちょっと・・・。
 と、かつての京商車オーナーであれば、誰でも一度は思ったろう。
 
 その汚名を返上すべく、
 京商技術陣が、その創意のすべてを注ぎ込み、市場に送り出したマシーンが、初代オプティマだ。
 車体は、世界レースにおいて実績のある、スコーピオン・トマホーク系のフレームを引き継ぎ、
 それを骨格として、チェーン四駆化を施した、RC史上に名を残す名車である。
 
 更に、スケール感では定評のあるタミヤボディに決して見劣りしない、
 洗練された秀逸なボディデザインも相まって、
 総計、10万台以上を売り上げた、京商会心のヒット作である。
 
 その輝かしい実績を持つオプティマに、大パワー8.4V仕様に対応すべく、
 様々な改良を加えたマシーンが、ターボオプティマだ。
 新開発のモーター、タイヤ、スタビ、ダンパー、アンダーシャーシーなどが装備され、
 チェーンと前後サスアームは、強化型となっている。
 
 ボディデザインは、更に、スタイリッシュに仕上げられ、
 走りのスケールを大きく変えたターボオプティマは、世界を威圧する、究極のマシーンへと昇華した。
 
 速さと美しさを兼ね備えた、比類無きマシーン。
 まさに京商が、他車を凌駕した瞬間だった。







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